柳宗悦

美を識ることは美を生むことへと高められねばならぬ。もし美を味わうに止まって、美を創ることに進まないなら、それは創られた美についても真に味わうところがないからである。未来への愛を含まない過去への愛は、過去への正しい愛と云えぬ。 ** 器を識る者は、必ずそれに手を触れるではないか。両手にそれを抱き上げるではないか。親しめば親しむほど、側を離さないではないか。 ** いつも知識はその無知に亡び、技巧は拙策に終るではないか。真の知は知にすら止まり得ないその知でなければならぬ。 ** 知識から信仰に達することが無理なように、意識の道から無想の美に達することはいかに至難であろう。だが私は自然が吾々のために平易な一途を別に準備してくれたことを感慨深く思わないわけにゆかぬ。